L’heure orientale

東洋時間
ここのところアラブ文化圏のお料理に取り組む毎日ですが、アラブ文化圏はヨーロッパ人にとって東。中国も日本も東。日本人がイメージする東洋はせいぜい中国、ヴェトナム、タイ辺りまで、インドからはちょっと同じグループの気がしません。(笑)日本とアラブ文化圏が共有する”東洋”のイメージって随分ざっくりな分け方であまりピンとこないかもしれません。ところが、お料理を作ってみると、なるほどと思うことがしばしば。何が一番東洋的だと思ったかと言うと”時間の流れ”。例えばバクラバというお菓子を作るのには、小麦粉ベースの生地を薄く、薄く伸ばして、それを何層にも重ねて、そこに細かく砕いたナッツをのせて、さらに生地を何層にも重ねて、またナッツを敷き詰めて、その上に生地を重ねたものをオーブンに。焼きあがったらお菓子の上から温めたはちみつをたっぷりかけて24時間ほど、はちみつがお菓子全体に染み込むのを待ちます。他にも野菜のファルシは味がじっくり染み込むように煮込んでから一晩おいてから食べるというなんとも気の長いレシピ。こういう時間をかけて準備するところ、なんとなく日本の食文化にも通じることがあるのではないでしょうか?
フランス料理はと言うと、手順は丁寧で細やかで、とろ火でコトコトと言うのは思い浮かぶのですが、ゼラチンの入ったお菓子を冷ますとか固めるのにせいぜい2〜3時間、クレープの生地を一晩寝かしたり、テリーヌを落ち着かせるのに一晩冷蔵庫に入れておくぐらいでしょうか?
一晩寝かして食べるということは今日来るお客様には出すことができないということ。明日のお客様のおもてなしの為に二日かけて準備するなんて贅沢な時間の使い方ですね。もちろん今では働く女性も多いでしょうからお菓子屋さんで簡単に調達することも多いでしょう。笑
まぁとにかく焦らない感じがポチッとしたらすぐ届くみたいな気ぜわしい現代とすごくギャップがあって日本いながら異文化の国にホームステイした気分になるから不思議。
毎日ドタバタと動き回ることの多いクミックですが、千夜一夜物語のお料理はシエラザートの時代にタイムトリップして、ゆったりとした時間の流れを感じることのできるひとときだなと実感しています。


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